今回の買い付け旅に同行するライターのイズミ(@cotobird_trip)は、約25年前に同じデザイン事務所で働いていた私の元同僚で、退職後にライターとデザイナーの制作ユニットを組んでいた仲だ。昨年久しぶりに再会して何回か会ううちに、彼女はタイに関わる仕事を、私は新しい展開を見つけたいということで意気投合し、一緒に旅に行くことが決まった。

そしていよいよ、タイでの買い付け旅がスタートした。タイ国内での移動手段は、もっぱらgrab。スマホアプリで車を呼べるサービスで、初めから運賃が決まっているのと、待っている場所にすぐに来てくれるのがとても便利だ。とはいえ、grabに登録した一般人の自家用車に乗せてもらうわけだから、人も車も個性いろいろ。途中で運転手の私用に付き合うことになったり、延々と愚痴を聞かされるなんてこともあったけど、便利さを考えるとそんなことも許容範囲だった。

今回買い付けるものについては特に決めていたわけではなかったが、心惹かれるがままに買っていたらほとんどが手仕事のもので、自分の探しているものがよりくっきりと明確になった。一方で一緒に買いつけていたイズミとは選ぶテイストが違うのが興味深く、自分では見つけることができなかったものを彼女のフィルターを通して見つけることができたのは、新たな発見だった。

イズミ撮影



旅の中盤、イズミつながりで知り合った現地在住の日本人女性、せっちゃんにアテンドしてもらう日があった。連れて行ってもらったのは、私がお店の雰囲気に惹かれてどうしても行きたかった、タイの山岳民族や各地の民芸品が集められたお店。せっちゃんは店主のブンリンさんと知り合いで、わざわざ都合をつけてもらい、じっくりとお話を聞かせてもらえた。

ブンリンさんがお店を始めるきっかけは、40年ほど前に知り合ったカレン族の女性の生活を助けるために彼女たちの手織りの布を販売するようになったこと、作り手に寄り添いサポートをしながらお店を運営していることなど、いろいろ話を聞いているうちに「ああ、私はこの人の話を聞きにここまできたんだな」と、なぜか確信めいた思いで話を聞いていた。

イズミ撮影


長年お店をやっていると、モノを売るのに「ハシュケでなくてはならない理由」を見失うこともあって、時代の変化に淘汰されそうになりながら、自分自身の在り方について見つめなおすことが多くなっていた。今回旅に出るという大きな一歩を踏み出し、これからハシュケが進む新たな一筋の光が見えてきたような気がした。



「いい香りがするよ」とブンリンさんが教えてくれた、庭に咲いていた花(せっちゃん撮影)




この記事を書いた人

 ハト(ハシュケ店長

仕入れから撮影、ショップづくり全般に携わる。自分をもてなしてくれる居心地の良い家づくりを心掛けている。猫とビールと岩盤浴好き。

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